【速報】OECDが30年ぶりに「評価」を見直し!新登場の新しい視点「Coherence」を使いこなそう!
2020/01/28 13:36:00 |
ライブラリ |
コメント:2件

要約: 30年ぶりにOECDの「評価項目」(プロジェクトのいい悪いの価値基準)が見直されて、新しい項目「Coherence」が登場しました!
評価6項目 |
その意味は? |
Relevance |
= 関連性/合致度/ ニーズ (妥当性は誤訳?) |
Effectiveness |
= 有効性/ 目標達成度/ 達成への効果 |
Efficiency |
= 効率性/ 無理無駄をなくす |
Impact |
= インパクト/ 長期目標達成/ 広い領域の影響度 |
Sustainability |
= 持続性/ 自立発展性 |
Coherence |
= 協働一貫性/相乗効果 (新登場!!) |
この評価6項目は国際協力のプロジェクトだけでなく、「転職プロジェクト」とか「婚活プロジェクト」とか、「おいしいラーメンを食べよう」という視点でも使えます。
さらに、新しい項目「Coherence(協働一貫性)」は、一人よりもみんなで協働することが大切ということを教えてくれます。
迷ったときには、評価6項目で見直してみると、新しいバランスのとれた人生につながります。
という話をします。
この記事は、筆者である「三好崇弘」の個人的な見解100%です。それをご理解の上で以下をお読みください。意見がある方はコメント歓迎いたします。
-------------------------------------------------
世界の主要国が経済について協議調整する機関、OECD(経済開発協力機構)の専門委員会である「開発援助委員会DAC」が1991年末に設定した「評価5項目」というのをご存知でしょうか?
1980年代から激増する国際開発協力・開発援助に対して、各国がバラバラに評価をしていては何がいいのか悪いのかわからないということで、OECDの主要援助国により結成されたDAC(開発援助委員会)で、議論が積み重さね、5つの以下の視点にまとまりました。
- Relevance (妥当性/ 関連性)
- Effectiveness (有効性/ 目標達成度/ 達成への効果)
- Efficiency (効率性)
- Impact (インパクト/ 影響度)
- Sustainability (持続性/ 自立発展性)
この5つの視点は「評価5項目」と呼ばれ、その後30年間にわたり世界中の国際協力の文脈で活用されてきました。
言語も文化も歴史も全然異なる国々が徹底的に議論しただけあって、幅広い視点でかつポイントを押さえています。
そして、その30年後、2019年に、再度この評価5項目の見直しが行われ、新しい視点が一つ加わりました。
- Coherence
です。
これで評価6項目となったわけですが、この新しい視点も含蓄があるものです。
私はこれまで20年にわたり、「評価」について研修をしていましたが、教えれば教えるほど、この評価項目の深い意味について感心をしてきました。
今回は既存の評価5項目と新しい評価項目"Coherence"も含めて、実生活に合わせて、自分なりの説明をしていきたいと思います。以下の説明は筆者の個人的な見解です。
---------------------------------------------
Relevance |
= 関連性/合致度/ ニーズ (妥当性は誤訳?) |
「それ誰のためにやるのかな? 本当にやりたいのかな?」
まずは、Relevance。言語的な意味は「関連する」「関係している」という意味です。誰のための、どんなニーズ(やりたいこと、必要とされていること)に、関係しているのか、それとも関係していないのか。という視点です。
なぜか日本(外務省)では「妥当性」と訳されていますが。妥当というと「ちょうどいい」という意味がありますが、それではないです。
例えば、転職(または婚活)をしたいという場合、転職(または婚活)というのは誰が求めているのか? それが私であれば、私の本当のニーズはなんなのか。それをしっかりと見据えることが大切だよ。美味しいラーメンを食べたいというプロジェクト。それ本当にあなたがしたいとおもっていることなの?
また、自分だけではなく、転職に関わるすべての人たちのニーズ。例えば自分の配偶者はどうおもっているのか、家族は? 所属している会社はどうか? それぞれのニーズと照らし合わせて考えていきましょう。ということです。
Effectiveness |
= 有効性/ 目標達成度/ 達成への効果 |
「結局何を達成したいのかな? それで達成できるのかな?」
Effectというと「効果」ですね。効果を出すということは目標を達成するということ。そこで、有効性の最初の視点は・・・「それで最後に具体的に何を達成したいのか?」 ということです。
転職プロジェクトとすると、プロジェクトが達成されたということはどういうことでしょうか? それは「転職先が決まる」というレベル? 「転職していい給与をもらえた」というレベル? それとも「いい仕事先で友人にうらやましがられる」というレベル? いろいろなレベルが考えられますね。
でも、よく考えてみると、それぞれ具体的に目指すところがずれています。有効なプロジェクトにするには、目標を具体的に一つに絞ることです。絞ることができないと、注意散漫かつ、達成するまでに膨大な活動が必要となり、または「運任せ」となり、結局、失敗します。
目標が明確になったら、それを確実に達成するために、必要十分な条件を考えていきます。問題系図-目的系図という考え方があります。(検索すると出てきます)目標を達成するために必要な前提となる条件は何か、その条件を作り出すためにできることは何か、…考えていくと、それが必要な「活動」になっていきます。または、自分ではどうしょうもできないこともでてくるでしょう。これらは「外部条件」として考えて、しっかりと見守りながら、自分でできる部分に全力投球するのです。
Efficiency |
= 効率性/ 無理無駄をなくす |
「無駄なことしてない? 無理してない?」
次にご紹介するのは、Efficiency=効率性です。考え方は単純で、「100の努力をしたら、100以上の結果がでないものは、やめましょう」という考え。一生懸命やればいいということではなく、もっと楽に手を抜いてやれる方法はありませんか? ムダな動きをしていませんか? ムリなことをして結局続かなくなっていませんか? と問いかけます。
婚活プロジェクトでいえば、すべて自分でやる必要はないかもしれません。部分的にはプロや友人に任せてみて、自分はその間に別のことをできたらいいですよね。美味しいラーメンを食べるプロジェクトも同じで、自分の足で探すことも大切ですけど、ネットでまずはしっかり確認してから、お店を選んでみましょう。
効率性には、「断捨離」という視点もありますね。地域づくりとかで、「祭りが人が集まらなくて苦労している」なんて話をききます。でも、そのお祭りがいくら大切なものでも、そのために地域の人たちが疲弊して、若者も駆り出されて、不公平感が残り、結局その地域を離れていく・・・なんてことになると悲しいですよね。だったら、ムダ・ムリをやめてみて、例えば「お祭りの規模を縮小する。」「お祭りにくる外部の人たちにも手伝ってもらう新しいスタイルの祭りにする」なんてことを考えてみることも必要です。これが効率性。
Impact |
= インパクト/ 長期目標達成/ 広い領域の影響度 |
「長期的・上位の目標は何かな? これをやるとどんな変化が起きるかな?」
インパクトは、影響力の意味です。先ほど紹介した「有効性」よりも広い視点をもって、効果がプロジェクト以外にももたらされることを意識しましょうというメッセージ。
上記の婚活または転職プロジェクトを考えてみましょう。婚活パーティー、または転職のセミナー説明会を繰り返すことで、自分自身の考え方にも変化が生まれたりしませんか? または、色々なところにいって、様々な人に会うことで、「結婚よりも大切なことがある」または「自分には就職ではなく、起業があっている」なんてことに気づくかもしれません。
反対に、そのような場所に出て、悪い人に騙されて、怪しい儲け話にはまってしまい、破産・・・なんてことも。
道路建設プロジェクトだと、いいインパクトとしては、「雇用が創出される」なんてことがいるでしょう。一方で、環境が悪くなる。なんて悪いインパクトも起きます。
インパクトはそのような広い視点で考えてみましょうということです。いいことも悪いことも、同時に起きたりします。いいことは起きるように、反対に悪いことは起きないように注意することが大切ですね。
Sustainability |
= 持続性/ 自立発展性 |
「その効果は持続するかな? 自立して続けられるかな?」
Sustainableサスティナブルという言葉は日本語英語になってきていますね。SDGs(持続的開発目標)のブームとも相まって、「持続的」というテーマは重要になってきています。この持続性はとても重要なテーマです。
この持続は、何もプロジェクトを持続させようということではありません。プロジェクトが持続するというのは、要はプロジェクトとしてだらだらと目標も明確にしないでやっている証拠でもあり、有効性が低く、効率性もなく、失敗と(私は)考えます。
持続性とは、プロジェクトがもたらした「効果」や「成果」が持続するということです。例えば、婚活プロジェクトで、結婚相手(結婚しようといってくれる人)が見つけて、大成功! とおもったら、セミナーがおわったら、なんだか疎遠になってしまい、結局は結婚自体はできなくて、また「結婚紹介サイト」に数十万払って再開・・・。なんてのは、持続性はまったくないですよね。
婚活も転職も、そのプロセスを通じて、自分なりの婚活(自分磨き)や転職(キャリア開発)の方法を身に着けていき、プロジェクトの後には、自分でそのような活動を「自立」してできるようになるとすばらしいですよね。それは、単なる転職の一時的な成功よりも、人生そのものを大きくしてくれる価値の高いものです。
よく目標は達成して有効性は高いけど、その効果はドナーがいるからで、ドナー撤退後の持続性がない、というプロジェクトが国際援助プロジェクトではたくさん見受けられます。この場合、プロジェクトとしては成功でしょうか、失敗でしょうか。国造りを支援しているはずのプロジェクトが、結局援助依存体質をつくってしまったとしたら、それは失敗と(持続性を重視する私は)思います。
婚活も転職もそれぞれ人生の大切な課題。その課題を乗り越えることで、人生を生き抜く力をつけていくことが、「持続性」のテーマとなります。一番、根源的なテーマといえるでしょう。持続性には、ある意味「失敗」は存在しません。失敗から学ぶことは、大きな前進と考えるのです。最後には自立した自己を確立することが、持続性の目指すゴールです。
Coherence |
= 協働一貫性/相乗効果 (新登場!!) |
「同じ目的を持つ人と一緒にできないかな。反対に誰かの邪魔をしていないかな?」
さて、2019年から新登場の新しい評価項目は「Coherence」です。辞書だと「一貫性」なんですが・・・・、これだと、relevance(関連性)と何が違うのかわからないですね。誤解を恐れずに私の訳は「協働一貫性」とします。
Coherenceを分解すると、「Co+herence」。Coは、Cooperation(協力)やCoordination (調整)といった、意味があり、二人以上の存在が協調しながら何かをしているイメージ。一方のherenceは、「継承」という意味。つまり、二つ以上の別物が何かを紡いでいき一つのモノになっていくこと、という意味が見えます。
2018年から1年にわたりOECDは様々な議論をした中で、様々な評価項目(別の候補はEquity=平等性など)が合った中で、この言葉を選んだのは意義があると思います。SDGsといういわば「祭り」が始まる前から、環境問題や地域戦争など、国を越えた課題が存在しており、それは一つの大国でも解決できないこと。さらに、国や町、NGO、会社という枠でも解決はできません。ましてや個々人の意識にかかっている。。なんて夢物語です。
そこで出てきた「協働一貫性」=Coherence。一人で解決できないからこそ、他に協力を積極的にもとめて、いきましょう。一つのプロジェクトでも、一人でも、他を巻き込んでいきましょう。協働し一貫した行動をとることで、大きな課題を解決しましょう。というメッセージです。
プロジェクトでも、インパクト評価(プロジェクトの効果があったのか否か)の議論が進みずぎると、「一人勝ち」の思想がまかり通るようになります。「これは俺がやったんだ」「いや、私が出した成果よ」というようなエゴむき出しのプロジェクト評価、すべていいことはプロジェクトのおかげという「我田引水」な評価があることも事実です。実際には一つのプロジェクトですべてが良くなるなんてことは絶対にありえないのですが・・・・・。だからこそ、一つ一つのプロジェクトが一人勝ちを目指すのではなく、相互に協力を積極的にすることで、大きな目的を達成することが求められているのです。
転職・婚活プロジェクトで考えてみるとどんなふうになるでしょうか。転職の場合、みんなで勉強会を開いて、情報を一緒に共有したり、または雇用者になるようなひとと交流会をして「いい転職とは何か」を考えるセミナーをすることで、よりよい転職マッチングにいきつくことがあるでしょう。婚活でいえば、ライバルを出し抜くのではなく、ライバルとなるようなひとと一緒に「婚活イベント」を開いてみることで、もっと幸せな結婚に結び付くことでしょう。多くの同志を巻き込んでいくからこそ、より良い結果に結びつくのだと思います。先に結婚/入社が決まって「俺は勝組だ!」なんて姑息なことよりも、他の人と協力することで、結婚や入社後の人間関係もふくめた豊かな人生につなげることもできると思います。
社会課題解決にこそ「協働一貫性」は必要不可欠です。最近、増えてきている子供の虐待やいじめ問題も、児童相談所や学校、警察、地域の関係機関は、しっかりとやっているのだとおもいます。「それぞれの」プロジェクトとしては・・・・。でも、それぞれのプロジェクトが自分だけの目標を求めているのではなく、本当に意味のある成果を出すためには、プロジェクト/各機関が率先して、上部組織から言われなくても、プロジェクトを越えて、さらに組織や業界を越えて、大きな課題を解決をするために、協働し一貫した活動をしていくことが求められているのです。
----------------------------
さて、みなさんはどう感じられたでしょうか?
以下、OECDのウェブサイトから抜粋した各評価項目の説明です。
RELEVANCE: IS THE INTERVENTION DOING THE
RIGHT THINGS?
The extent to which the intervention
objectives and design respond to beneficiaries’, global, country, and
partner/institution needs, policies, and priorities, and continue to do so if
circumstances change.
EFFECTIVENESS: IS THE INTERVENTION
ACHIEVING ITS OBJECTIVES?
The extent to which the intervention
achieved, or is expected to achieve, its objectives, and its results, including
any differential results across groups.
EFFICIENCY: HOW WELL ARE RESOURCES BEING
USED?
The extent to which the intervention
delivers, or is likely to deliver, results in an economic and timely way.
IMPACT: WHAT DIFFERENCE DOES THE
INTERVENTION MAKE?
The extent to which the intervention has
generated or is expected to generate significant positive or negative, intended
or unintended, higher-level effects.
SUSTAINABILITY: WILL THE BENEFITS LAST?
The extent to which the net benefits of the
intervention continue, or are likely to continue.
COHERENCE: HOW WELL DOES THE INTERVENTION
FIT?
The compatibility of the intervention with
other interventions in a country, sector or institution.
------------
以下に本文が載っています。
https://www.oecd.org/dac/evaluation/eval-criteria-global-consultation.htm
https://www.oecd.org/dac/evaluation/daccriteriaforevaluatingdevelopmentassistance.htm
まだ、正式な日本語訳は存在しないようですので、ご興味のある方は、ご自身の翻訳をつくってみるのも、楽しいと思いますよ。
以上、三好崇弘の視点からみた「評価6項目」の解説と使い方でした。コメント歓迎します!
------お知らせ1---------------
一番やさしい評価講座を北海道と長野で開催します!【20202年2月と3月】
↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓
http://glfp.jp/blog-entry-108.html
評価を勉強してみたい方、興味のある方、参加できます。
-------------------------------
-------お知らせ2--------------
業界では有名なイツローさんとの対談で今回の評価6項目について話しています。
↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓
「有識者って言葉が大っ嫌いなんだけど・・」(タイトル)
-------------------------------
三好崇弘
GLFP.JP
Author:GLFP.JP
(G-local Friends & Professionals Japan)
グローバルにローカルにいろいろな人がつながり、各自の枠を超えた新しい価値や生き方を見つけるための「場」を提供しています。メンバーになるには下の「メーリングリストに参加する」にメールアドレスを入れてください。
コメント
質問
さて、記事中の「2018年から1年にわたりOECDは様々な議論をした中で、・・・」で始まる段落の後半にあります、「環境問題や地域戦争など、国を越えた課題が存在しており、それは一つの大国でも解決できないこと。さらに、国や町、NGO、会社という枠でも解決はできません。ましてや個々人の意識にかかっている。。なんて夢物語です。」というのは筆者のご見解でしょうか?あるいはどちらからかの議論などの参照でしょうか??確認させていただけると幸いです。
Coherence= 整合性
Coherenceの評価で使う場合の和訳は
「整合性」という
訳になったようです。
なるほど。
整合Consistencyとの違いをどうとらえて、
本来の「協働」の意味を広げていくか、
問われていきそうですね。
コメントの投稿